体調についての記録

体調について記録していきたいと思います。

FXと体の調子+脚本 2020年3月9日

在宅勤務は自分に甘い人には不向きです。

 

2020年3月9日(月)

〇 体調報告 体調ばっちり。

今日から在宅勤務。油断すると仕事以外の事をしそうになる。今日は6時間半と結構長く働いたけどしんどくはなかった。

 

〇2020年3月8日(日) FX報告 日曜日は取引できないのでなし

 

 

 〇脚本(ドラマ第一話) 

過去に脚本募集で提出した作品(選ばれてません)

 

「白鳥と龍」

 

登場人物

白鳥 優(22)(10) 何でも屋兼SWANというボードゲームバーのオーナー

大門 龍(22)(10) 大学生

みずほ(20) 白鳥の経営するボードゲームバーの店員兼白鳥のアシスタント

白鳥 風子(19)(7) 白鳥優の妹 大学生

大門 鬼頭(56)(44) 大門龍の父親 暴力団の組長

片瀬刑事(52) 白鳥優が出没するボードゲームバーの常連 マル暴刑事

やくざ

孝介

洋子

ゴージャスという会社の上司

ゴージャスという会社の社員(男1)

 

 

 

○街中のビル

白鳥優、ビルの非常階段を駆け下りる。

白鳥の後ろを鬼のような形相でやくざ

が追いかけてくる。白鳥、店の外に置

いているゴミ箱をやくざの方へ転がす。

やくざ、ゴミ箱を払いのける。

やくざ「大門、待て!」

白鳥とやくざ、通りを駆け抜ける。

白鳥、角を曲がったところにある立て

看板の後ろに隠れる。

やくざ、気付かず、走り抜ける。

白鳥、目の前にある総合病院の中へ入

る。

 

○(空想)倉庫の入口

隼明人が薄暗い倉庫へ入り、1階を見

回し誰もいてない事を確認して、倉庫

の2階へと足音をしのばせながら、階

段を上る。2階へ着いた途端、襲い掛

かってくる男たちを難なくかわし、倉

庫の奥で猿ぐつわをして椅子に座らさ

れている女の元へ駆け寄り、彼女を抱

きかかえ、窓の外の青空に向かってジ

ャンプする。

 

看護師「…門龍さん」

 

○空想の世界から総合病院の泌尿器科の待合室へ

大門龍、待合室の椅子に座り、没頭し

ていた愛読書から顔を上げて、周りを

見る。

看護師「大門さん、大門龍さん」

大門龍が立ち上がろうとすると、横に

座る男(白鳥優)が立ち上がり、大門

を探していた看護師の後について診察

室に入る。

大門「同姓同名か。珍しいな」

大門、小説に目を落とす。

きょろきょろしながら、一人のやくざ

泌尿器科へ近づいてくる。
やくざ「大門!」
大門「はい!」

大門、勢いよく立ち上がる。

やくざ、大門の後ろから大門の髪の毛

を引っ張る。

大門「痛い!」
やくざ「うわ!」

やくざ、白鳥に殴られ床に倒れる。

白鳥が大門の左腕を掴み、走り出す。

大門「え、何、どうなってるの?」

 

タイトル『優と龍

 

○街

大門と白鳥、街の通りを走り抜ける。

その後をやくざが追う。

大門、後ろを振り返り、やくざが追っ

てきているのを確認した後、隣を走る

白鳥を見ると、白鳥も大門を見て、右

の口角を上げて笑みを浮かべる。

白鳥「あんた、童貞?」

大門、立ち止まりかける。

やくざ「オラー!」

白鳥、大門を引っ張る。

再び、大門、走り出す。

大門と白鳥、ビルの谷間に隠れる。

やくざ、気付かず走り抜ける。

大門と白鳥、ビルの谷間から出て、や

くざと反対方向へ走り、後ろを振り返

り、やくざを巻いたのを確認した後、

立ち止まる。

大門「ああ怖かった! 何だったんだ、いったい!」

大門、しゃがみ込む。

白鳥「もう大丈夫だね。それじゃ」

白鳥、手を軽くあげ、歩き始める。

大門「助けてくれて、ありがとう」

白鳥、立ち止まって、振り返る。

白鳥「あ、そうだ、あんた、出身は神戸?」

大門「え…、違う、東京。」

白鳥「そっか。じゃあな」

白鳥、大門に背を向ける。

大門「ちょっと、待って。僕、大門龍」

白鳥「知ってる。看護師に呼ばれてもなかなか気付かなかったくせに、やくざに呼ばれたらすぐに大きな声ではいっ!て答えるし。包茎だし」

大門「な、なんで、それを」

白鳥「さっき、診察室に入ったら、先生、俺を大門龍と思い込んでいるから、俺にパンツを脱げって。包茎を治すんだってな」

白鳥、右側口角だけ、くっと上げて

笑う。

大門、ムッとする。

大門「あなた、僕の横にいた人だね。大門龍って名前じゃないの?」

白鳥「時々大門を名乗るけど、本名は違う」

大門「どういうこと? それじゃさっき看護師さんが呼んでいたのは、やっぱり僕のことだったんだ」

白鳥「そうだね。あんたが包茎だったら、

あんたのことに間違いない」

大門「大きい声で言わないでくれる? ねえ、あなたが大門龍じゃないんだったら、なぜ診察室に入ったの?」

白鳥「やくざから身を隠すため」

大門「なんだ! それじゃ、僕、とばっちりだったんだ。謝って損した。」

白鳥「悪かった。それじゃ。」

白鳥、歩き出す。2.3歩歩いたとこ

ろで振り返る。

白鳥「そうだ。あんた、包茎治さなくても、セックスできるよ」

大門「それ位知ってるよ。」

白鳥「じゃ、なんで童貞なんだ」

大門「誰が童貞って言った」

白鳥「童貞じゃないの?」

大門「なんでそんな事、さっき会ったばかりのあなたに報告しなくちゃいけないわけ」

白鳥「そうだな」

白鳥、右側の口角だけ上げて笑った後、

また、前を向いて歩き始める。

大門、白鳥の後ろを一定の距離を保ち

ながらついていく。

白鳥、人ごみに一瞬紛れた後、突然身

を隠す。

大門、慌てて白鳥を探す。

白鳥「なんでついてくるんだ?」

白鳥、大門の背後から声を掛ける。

大門「ねえ、もしかして探偵とかしている?」

白鳥「それを聞いてどうする?」

大門「アシスタントにしてくれない?」

白鳥「何のために?」

大門「だって、あなた、隼明人にそっくりなんだもん!」

白鳥「隼明人?」

大門「そう! 痛快探偵シリーズ隼探偵事務所の隼明人!」

大門、手に持っていた小説の表紙のタ

イトルを指さす。

○小説のタイトルUP

大門「え、知らないの?ドラマにもなったんだけどな。」

白鳥「小説だかドラマだか知らないが、あんたのお遊びに付き合っていられる程、俺は暇じゃないんだよ。」

白鳥、歩き出そうとする。

二人の目の前をコンビニのお弁当を持

った子供(孝介)とコンビニの店員が

駆け抜け、店員が孝介を捕まえる。

店員「この、泥棒が! やっと捕まえたぞ」

孝介「離して! ごめんなさい。もう二度としません」

孝介、泣く。

店員「警察を呼ぶから来なさい」

店長、孝介の腕を引っ張る。

孝介、大泣きする。

大門「ちょっと待って下さい。僕、この子の叔父なんです。僕が行くまでコンビニの中で待ってろって言っただろ。僕が代金を払う前に、お弁当を持ったまま出てきたらダメじゃないか。すみません。今回は許してもらえませんか? ちゃんと言い聞かせますので」

大門、お弁当の代金を店長に差し出す。

店長「そういうことなら。ちゃんと注意してくださいよ」

店長、お金を受け取って、去る。

大門「行っていいよ」

孝介、逃げるように走っていく。

白鳥「僕ちゃん、いい事したってか」

白鳥、右の口角を上げて笑う。

大門「そんな事思ってないよ。子供が弁当を盗むって、よっぽどお腹を空かせているんだよ、きっと。だから」

白鳥「助けてあげたって言いたいのか? 助けるってことの意味が分かっているのか。あんたがしたことは、さっきの子を助けるどころか、むしろ、逆だ。一時しのぎにお金を出してやるだけなら、警察に突き出した方がまだましだ」

大門「お弁当一個で警察に突き出すなんて可哀想じゃないか」

白鳥「小さい罪の内に自分のしてしまった事の重大さを思い知らないと、いずれ、大きな罪を小さな罪としか思えない人間になってしまう。」

白鳥、無言で歩き出し、男の子の後を

追いかける。

大門、白鳥の後ろを小走りでついて行

く。

 

○古いアパートの前 埃をかぶった川田という表札 扉の郵便受けに溢れる郵便物

孝介がアパートの扉を開けて部屋に

入る。

白鳥、大門、扉の横の小窓から中の様

子を窺う。

 

 

○アパートの部屋の中

男1「ちょっと遊びに行ってくるからよ。2

万円程くれや」

洋子「そんなお金どこにあるの?」

男1「ないなら、早く稼ぎに行けよ」

男が女の頭をたたく。

男1「さっさと行けや!」

孝介「やめて! おじさん、ほら、おじさん、

お弁当だよ。」

孝介、男1にお弁当を渡す。

男1「チッ! こんなしょぼい弁当しかなかったのかよ。」

男1、お弁当を壁に投げつけて、孝介

をたたこうとする。

洋子、孝介の前に立つ。

洋子「私をぶつのはいいけど、この子に暴力

を振るったら、どんな手を使ってでも、

あんたを殺すよ」

洋子、男1を睨み付ける。

洋子「孝介、このお弁当はどうしたの?」

洋子、床に落ちているお弁当を拾う。

孝介「お、おじさんに買ってもらったんだ」

洋子「おじさんって誰?」

孝介「知らないおじさん」

洋子「知らないおじさんが買ってくれるわけ

ないでしょ」

孝介「本当なんだ! 盗もうとしたら、捕まって、警察に連れて行かれそうになったんだ。でも、知らないおじさんが来て、コンビニの人にお金を払ってくれたんだ」

洋子、男1の方に向き直る。

洋子「二度とこんな事をこの子に命令しない

で。その分、ちゃんと私が稼いで、あんたにくれてやるから」

男1「わかったよ。早く行けよ」

男、ふてくされて返事する。

白鳥、大門、アパートの側面に隠れな

がら様子を見る。

乱れた髪を直しながら、不機嫌な顔し

た女が部屋から出てきて、歩いて行く。

白鳥、大門、再び小窓に近付く。

孝介、すすり泣く。

男1「チッ!泣くなよ。鬱陶しいガキが!」

孝介、無言で下を向く。

大門、扉に近付く。

白鳥、扉を開けようとする大門を止め

る。

○パチンコ屋の前

男1、ズボンのポケットに手を突っ込

みながら、パチンコ屋に入って行く。

男1を尾行していた白鳥と大門もパチ

ンコ屋に入り、パチンコをしている男

1の横に座る白鳥。

大門、白鳥と反対側の男1の横に座る。

白鳥「ちょっと教えてほしいことがあるんだ

 が」

男1、面倒くさそうに白鳥と大門を見

る。

白鳥「川田めぐみを知っているよな。川田

めぐみと以前交際していた男の親族からの

依頼で調べているんだが、ちょっと向こう

の喫茶店で話を聞かせてくれないか」

白鳥、一万円札を1枚、男1に見せる。

男1、パチンコの玉がちょうどなくな

り、一本だけ煙草を抜いて、パチンコ

台に煙草の箱を置いて立ち上がると、

お金を受け取ってジャージのポケット

に突っ込む。

 

○喫茶店

一つのテーブルに白鳥、大門が並んで

座り、男1が向かい側に一人で座る。

男1、煙草に火をつける。

白鳥「早速なんだが、川田めぐみはあんたの彼女か。」

男1「あんなしょぼい女と誰が付き合うか」

白鳥「そうか。それなからよかった」

男1、訝しげに白鳥を見る。

白鳥「川田めぐみが過去に交際した男は皆、

死んでいる。川田めぐみと付き合い始めると、皆、一様に体調を崩し、最終的に死んでいったようだ。一番最近亡くなった男の妹が、川田めぐみが、男の食べ物に微量の毒を混入させて、徐々に弱らせて殺したんじゃないかと疑って、俺に依頼をしてきた。過去10人程調査してみたが、皆、同じ様な死に方だったな。最後は相当苦しいみたいで、血をはいて、悶え苦しみながら死ぬらしいぜ。」

男1、怯えた顔になる。

白鳥「まあ、あんたは付き合ってないみたいだから、大丈夫だな。話に付き合ってもらって悪かったな。それじゃ。あ、そうだ。万が一だけど、彼女の手料理を食べることがあったら、味の濃いものは気を付けろ。毒が入っているかもしれないからな」

白鳥、お勘定の紙を取って立ち上がり、

茶店の出口へ向かう。

大門、白鳥の後ろを小走りでついて行

く。

大門「さっきの話は本当のことなの?」

大門、白鳥の顔を覗き込む。

白鳥「今日初めて会った女の事を俺が知っている訳ないだろ」

大門「それじゃ、なんで、川田めぐみって名前を知ってるの? それに、何のためにあんな作り話をするわけ?」

白鳥「名前は、さっき家に行った時に郵便物の宛名をチェックしておいたんだ。あんた、さっきの男の子を助けたいんだろ?」

大門「え?」

白鳥「あんた、俺が男に言った話を聞いてどう思った?」

大門「どう思ったかって? そりゃ、本当だったら、怖いって思ったよ。僕があの男だったら、すぐに川田めぐみから逃げるだろうなって」

白鳥「そういうことだ」

大門「そういうことって?」

白鳥「あんた、頭の回転鈍いな! あのどうしようもない男を、あんたが助けたい男の子の母親から引き離すためだ。とりあえず、今日は解散。俺のアシスタントをしたいと本気で思うなら、2日後、ここに朝10時に来るんだな」

白鳥、大門に名刺を渡した後、歩き出

す。

 

○白鳥が渡した名刺のUP(SWANというBarの名刺)

 

大門、白鳥からもらった名刺を見た後、

顔を上げると、白鳥の姿は視界から消

えている。

 

○SWANが入っているビルの前

1階の水色の扉にはくちょうの絵のプ

レートがぶら下がっている。ビルの前

には、可愛い木製の椅子やオリーブの

木等が置かれている。

大門、扉をおそるおそる開く。奥にカ

ウンターがあり、窓際には円形のテー

ブルが1つ置かれていて、テーブルの

周りには椅子が4脚置かれている。壁

際の棚には沢山のボードゲームが置か

れている。

大門、店内を見回して誰もいない事を

確認すると、出入り口が見える場所に

置かれた椅子に腰をかける。約束の10

時が過ぎ、10分が過ぎた頃、扉が開き、

みずほが中に入ってくる。

みずほ「行くよ」

みずほ、大門の腕を取り、事務所の外

へと歩き出す。

大門「あなた、誰?えーと、あの人は?」

みずほ「みずほ。スワンさんとは後で合流」

大門「あの人、スワンさんっていうのか。ね

 え、どこへ行くの?」

みずほ「服屋」

大門「何のために?」

みずほ「スワンさんに頼まれたんだ。ダサい男が事務所にやって来るから、格好いい男に変身させてくれって」

大門「僕、ダサい?」

みずほ、立ち止まり、大門の上から下まで見て、うんうんと頷く。

みずほ「ダサいってもんじゃないね」

 

○服屋

試着室のカーテンが開く。

大門「こんな格好いやだよ」

大門、男っぽい服装で試着室の鏡の前

に立つ。

みずほ、服を脱ごうとする大門を引っ

張って店の外に出る。

みずほ、大門を引っ張りながら通りを

歩く。

○歓楽街のビルの前

洋子、ビルの階段を上がって行く。

大門、ビルの前のソープランドの看板

を見る。

ソープランドの看板のUP

大門「無理だよ」

白鳥「俺のアシスタントになりたいなら、教えた通りにやるんだ」

白鳥、大門の背中を押す。

大門、しぶしぶビルの階段を上って行

く。

みずほ、微笑みながら、大門に手を振

る。

みずほ「なかなか、人を信用する事のないスワンさんが、知り合ったばかりの得体の知れない子とつるむなんて珍しいね」

みずほ、白鳥の顔を覗き込む。

白鳥「あいつ、弁当を盗んだ子供を守ろうとしたんだ。トラブルに巻き込まれないように生きている人ばっかりのこのご時世に。ややこしい他人の人生に自分から関わろうとすることができるやつって、そういてないだろ。ま、気が弱そうだし、ドジそうだから、この先、どうなるか分からないけどね」

白鳥、右の口角を上げて微笑んだ後、

ソープランドのビルに背を向けて歩き

出す。みずほも白鳥の後ろについて歩

き出す。

 

ソープランドの部屋の中

洋子、ペットボトルのミネラルウォー

ターを飲む。

洋子「本当に話だけでよかったの?」

大門「本当に話だけでよかったんです。」

洋子「変わった人ね」

大門「よく言われます」

大門、部屋を出ようとする。

洋子「ありがとう。久しぶりよ。私の話を真剣に聞いてくれる人。」

洋子、部屋を出ようとしている大門の

背中に声を掛ける。

大門「あ、うん」

大門、店から外に出る。

 

○開店準備中のSWANの店内

白鳥「どうだ。童貞を捨てた気分は?」

白鳥、グラスを拭いて棚に戻す。

大門「だから童貞って誰が言ったんだよ。」

大門、テーブルを拭く手を止めて、白

鳥を睨む。

白鳥「童貞じゃないのか?」

白鳥、別のグラスを手に取り、照明に

かざし、くもりがないか確かめる。

大門「だからなぜそんな事を僕があなたに報告しなくちゃいけないの?」

白鳥「明日からしばらく、ソープに行って、あの子の母親を指名してくれ。童貞を捨てるか捨てないかはあんたの自由にしていいし」

大門「だから、僕が童貞って」

白鳥「やっぱり、もうそのくだりはいいや」

白鳥、右の口角を上げて笑う。

大門「悪い男もいなくなったんだし、もうあの親子も大丈夫なんじゃない」

白鳥「今はね」

大門「どういうこと?」

白鳥「植物も人も世の中も、根っこの部分からちゃんとしてあげないと、絶対に良くならないから」

 

ソープランドの部屋

洋子「いつも指名してくれてありがとう」

大門「うん」

洋子「もう2週間近く通ってくれているけど、いつも会話だけね。私は嬉しいけど、いいのかしら」

大門「うん」

洋子「なにか、企んでいる? 私、お金持ってないわよ。稼いでいるように思うかもしれないけど、付き合ってた男が作った借金を返していて、貯金も全然ない状態なのよ」

大門「知ってる」

洋子「え?知ってるって?」

大門「い、いや、ドラマとか映画とかでよくあるパターンだから。僕、あなたといると落ち着くんだ。話をしてくれるだけでいい。それにしても、なんでそんな男と付き合ったのさ。」

洋子「私ね、婚活してたの。離婚した後、子育てに必死で誰かと付き合うとか考えたことなかったんだけど、なんだか急に心細くなって、隣で支えてくれる人が欲しくなって、無料の婚活サイトに登録したの。そこで、知り合ったんだけど、最初はすごく優しくてね。子供がいても全然構わないって言うし。でも、しばらくすると、親が手術することになったからお金がいるって言い出して。最初は少額だったんだけれど徐々に要求する金額が膨らんでいってね。私、将来自分のカフェを持つのが夢で貯金も少ししてたんだけど、全部使い果たして、それでも足りないから、カフェの仕事を辞めてキャバクラで働き始めたってわけ」

大門「それが、なんでまた、ソープランドで働くことになったの?」

洋子「キャバクラでのお客の未払いのツケが溜まって、結局回収できなくて、それを消費者金融で借りてる内に、もうどうにもならない金額になってしまって」

大門「そんなにしてまで、その男と付き合っていたかったの?」

洋子「最初はね。女性として私を見てくれる人がいることがとっても嬉しくってね。でも、あの男が求めてるのは、女性としての私でもなく、私や孝介と築く家庭でもなく、お金だということが分かってからは、別れようとしたんだけど、別れ話をすると、あの男、暴力を振るうようになって。それでも最初は気持ちを奮い立たせて何度も別れようと言ったわ。だけどね、私一人の力ではどうにもならなかった。私が別れ話をすると、孝介にもひどい事をするようになったし」

大門「警察に言えばよかったのに」

洋子「警察に言っても無駄だって言われたわ。でも、最近になって、急にあの男、出て行ったの。理由は分からないけれど、本当に良かった。今のうちに引っ越しして、働くところも変えなくっちゃって思うんだけど、お金もないし。頼れる人もいないし。」

 

○開店前のSWANの店内

大門「というわけで、言われた通り、外で会う約束も取り付けたよ」

白鳥「やっぱり、怪しいな」

大門「何が怪しいのさ。それだけだよ。何も隠してないよ。本当に話をしただけなんだから。手だって触れてないのに。」

白鳥「あんたが童貞を失ったかどうかを怪し

んでいるんじゃないさ。あ、もういつも

のパターンの返事はいらないからな。」

白鳥、右の口角を上げて笑う。

白鳥「今度外で会う時に、ここへ連れて行っ

てみてくれ」

白鳥、大門に地図が書かれている紙を

渡す。

大門、地図をズボンのポケットにしま

う。

白鳥「今から買い出しに行くから、ついて来い。明日からは一人で行ってもらうから」

 

○公園の前

孝介が一人公園を囲むフェンスの外で

公園を見ている。

白鳥「ここで何してるんだ?」

孝介「あ、この前のおじさん達。」

白鳥「おにいさんだろ。まあ、おじさんでもいいけど」

白鳥、大門、公園の中でサッカーをす

る少年達を見る。

白鳥「見てるだけでいいのか? 一緒にサッカーしないのか?」

孝介「遊んでくれないんだ。あいつが家に来てから、皆、遊んでくれなくなった。」

孝介、目の前で走り回っている少年達

を見続けている。

孝介「バカだ。お母さんは。なんであんなや

つと付き合ったりしたんだろう」

大門、公園の中に入って行く。

白鳥「残念だけど、子供が思い描くような大人って、本当はいないんだ。いつも迷ってて、何が正解か分からなくて間違ってばかりで、弱くて、さみしくて、時々、あんぽんたんなんだ。」

○白鳥と孝介の向こう側で大門が少年達を集めて、何かを話している映像

孝介「あんぽんたんって何?」

孝介、白鳥を見る。

白鳥「あんぽんたんって、アホとかバカとか

と一緒の意味なんだけど、可愛いだろ、

あんぽんたんって」

○白鳥と孝介の向こう側で大門が少年達とサッカーをしている映像

白鳥「おまえのお母さんもあんぽんたん。僕のお父さんもあんぽんたん。子供や家族を一番に考えられない大人はあんぽんたんだ。だけど、今、おまえのお母さんは、あんぽんたんじゃなくなろうとしてる。だから、おじさんと見守っていよう。お母さんがあんぽんたんじゃなくなるまで、おじさん、ずっと見守っているから。」

白鳥、ポケットからぼんたん飴の箱を

出し、2粒取り出すと、1粒を孝介の

手に載せる。

孝介、ぼんたん飴のオブラートを剥が

そうとする。

白鳥、そのまま口に入れる。

孝介「剥がさなくていいの?」

白鳥「ああ。」

孝介も剥がす手を止め、そのまま口に

入れる。

白鳥「美味しいか?」

孝介「うん、まぁ、不思議な感じ」

白鳥、右の口角を上げて微笑む。

白鳥「おふくろを思い出すんだ。この飴を食べると」

孝介「おじさんのお母さん、死んじゃったの?」

白鳥「わからない」

孝介「わからないって?」

白鳥「おじさんは、孝介君の年齢の時に、一人ぼっちになったんだ。おやじもおふくろも妹もいなくなって、一人ぼっち。いいな、お母さんがいて。羨ましいよ。」

孝介「うん」

孝介、白鳥を見て微笑む。

大門、白鳥と孝介の所へ息を切らしな

がら近づいてくる。

白鳥「なんで、おまえが必死になってサッカーをしてるんだ?」

大門「ハァ、ハァ…ああ、しんど。孝介君、おいで、一緒にサッカーしよう」

孝介「僕の事は入れてくれないよ」

大門「大丈夫だから、おいで」

孝介、戸惑いながらも、大門の後をつ

いていく。

孝介「僕もサッカー一緒にやってもいいの?」

少年1「うん。一緒にやろう」

孝介、大門の顔を嬉しそうに見る。

少年2「ごめんな。お母さんが孝介と遊んだら駄目だって言ってたから。孝介ん家に怖いおじさんがいるから駄目だって。あのおじさん、家を出ていったんだってな。よかったな」

少年3「このおじさん、泣くんだよ。孝介が何を悪い事をしたって。悪いのは大人だろって。孝介と遊んでやってくれって」

大門「お兄さんは泣いてないぞ。あくびをして涙が出ただけだ」

少年4「鼻水も出てたよな」

孝介、少年達、笑う。

公園の外で様子を見ていた白鳥、右の

口角を上げて微笑む。

 

○古民家を改装したカフェ兼雑貨屋の前

大門「ここでお茶しない?」

洋子「へー意外! 素敵なお店知っているのね」

大門「うん」

大門、お店の扉を開ける。

カフェのオーナー星野「いらっしゃいませ」

洋子「本当、素敵な店!」

洋子、カフェの店内をぐるっと見回し、

ディスプレイされている商品のペンダ

ントを手に取り、窓から差し込む太陽

にガラスでできたペンダントトップを

かざす。

大門「そう言えば、洋子さん、カフェをやりたいって言ってたよね」

洋子「そうなの。私、元々、ずっとカフェで働いていたの。中学生の時にね、ちょうどこんな感じの雰囲気のいいカフェに初めて行って、ああこんな所で働きたいって思ったの。それからケーキとか、毎日作るようになってね」

大門「そうなんだ。借金がなかったら、カフェで働きたいと思ってる?」

洋子「今すぐにでもソープを辞めてカフェで働きたいけど、借金を返していける程のお給料はもらえないだろうし。」

大門「借金っていくら位あるの?」

洋子「2〇〇万円くらい」

大門「そうなんだ。」

洋子「でも、あの男がいなくなったから、今までよりも毎月多く返していけるし、早く完済して、またカフェで働くわ」

大門「うん」

 

○開店前のSWANの店内

大門「ってなわけなんだ」

白鳥「調べてみたけど、やっぱり怪しいんだよな。ちょこっと調査してきてくれないかな」

大門「な、何、調査って」

大門、パソコンのキーボードをたたく

白鳥の様子を窺う。

大門「本当、僕もう無理だからね。ソープランドへ行くだけでもう、精一杯」

白鳥「ソープはもう行く必要ないだろ。あの子の母親とはもう外で会えばいいんだから。ということで、明日、ここに面接に行ってきて」

大門「え、なんかヤバそうな会社じゃない?」

大門、パソコンを覗き込みながら、不

安そうな顔をする。

白鳥「ヤバそうだって?」

大門「ほらあ! 明らかにここの会社、やばそうじゃん!」

パソコンの画面一面に、怪しげなゴー

ジャスという会社のサイトが映し出さ

れている。

白鳥「やばそうじゃなくて、本当にヤバいんだよ。」

白鳥、右の口角を上げて笑う。

大門「何、ありえないんだけど」

白鳥「大丈夫だ。殺されるようなことはない。」小さい声で「ヘマをしなければ」

大門「無理だから」

白鳥「もし、本当にヤバい状態になったら、その時は、どんなことがあっても、必ず、助けに行く」

白鳥、真剣な顔で大門をみつめる。

大門「隼明人みたいだ! わかった、僕やる!」

みずほ「単細胞過ぎる」

みずほ、あきれた顔で大門を見る。

白鳥、SWANの外へ出て、扉にぶら

下げていた白鳥の形のボードを裏返す。

ボードの裏側にはOPENと書かれている。

 

○ゴージャスの事務所の中

大門「キャバクラで飲み歩くって、それって仕事なんですか?」

ゴージャスの上司「そうだよ。れっきとした仕事だ」

上司、ゴルフのパターをしながら答え

る。

大門「だけど、それじゃ、お金が出ていくばっかりで、お金を稼ぐことができないじゃないですか?」

ゴージャスの上司「それが稼げるんだよ。美味しい仕事だろ。遊んで、お酒を飲んで、いい思いをして稼げるんだから」

大門「なんだか怪しいな」

ゴージャスの上司「ごちゃごちゃ言ってないで、さっさと行け。あ、そうだ。間違えても、お店の代金を現金で支払うなよ。お店の女の子のツケにするんだ。わかったな」

大門「ツケにしてどうするんですか? 誰がそのツケを支払うんですか?」

大門の上司「店の女の子だな。まあ、返せるような金額には収まらないから、結局借金するしかない」

大門「返せない程高額な金額だったら、貸してくれる消費者金融もないと思いますけど」

ゴージャスの上司「あるんだよ。ここが経営している金融業者が」

大門「池崎さん、何のためにそんなことをするんです?」

ゴージャスの上司「男ウケしそうな女の子を借金漬けにしてソープで働かせるためさ。うまい仕組みだろ? さあ、もう質問はいいだろ。早く行って来い」

大門、事務所を出ようと扉に向かった

ところ、扉が開き、男1が入ってくる。

男1、大門の顔をじっと見て、考え込

むように眉間に皺を寄せる。大門、顔

を背けて、そそくさと扉の外に出る。

ゴージャスの上司「五十嵐、それで、ちゃんと川田って女の所に戻ったのか。お前が言ってた女の過去の話はデマだってわかったんだから、ちゃんと女からお金を搾り取るんだ。今月のお前のノルマは50万円だからな。女をきっちり見張って働かせるんだぞ」

男1「それが、あの女、引っ越しをしていてどこにいるか分からないんすよ。俺があの二人組の男のデマを信じている間に、何があったのか分からないんですけどね…。あ、思い出した。さっきの男、どこかで見たことがあると思ったら、俺にデマを吹き込んだ男の一人だ」

事務所の外で中の会話を聞いていた大

門、足音をしのばせながら、ビルの廊

下を歩き始める。扉の開く音が聞こえ

た瞬間、大門が後ろを振り返ると、男

1と目が合う。男1が大門の方へ走っ

て来る。

大門、大慌てで階段を下りる。ビルの

外へ出た所に止まっていた白鳥の乗る

バイクの後ろに飛び乗る。大門がバイ

クに飛び乗った瞬間、小さい黒色のボ

ールが大門のポケットから転がり落ち

るが、白鳥は気付かず、バイクを発進

させる。

大門「あ、落としちゃった」

白鳥「あきらめろ」

大門「でも、盗聴器」

白鳥「チッ!」

白鳥、バイクをUターンさせる。

白鳥「いいか。バイクが止まったら、すぐに

降りて盗聴器を拾え。」

白鳥、ゴージャスのビルの前で立つ男

1めがけて走る。ぶつかる寸前でバイ

クを止める。男1が目をつぶり、立ち

すくんでいる間に、大門がバイクを降

り、盗聴器を掴んでまた、バイクに乗

る。急発進をするバイク。男1の姿が

小さくなっていく。

 

○開店前のSWANの店内

―あ、思い出した。さっきの男、どこ

かで見たことがあると思ったら、俺に

デマを吹き込んだ男の一人だ。ガサガ

サいう物音―

大門「ってなわけで、かなりやばいよ」

大門、黒色のボール型盗聴器の再生停

止ボタンを押す。

白鳥「やっぱりそういう仕組みだな」

大門「そういう仕組みって?」

白鳥「婚活サイトで目ぼしいターゲットをみつけ、女の人の心の隙間に入り込んでお金を騙し取ったり、キャバクラで働かせ多額のツケを背負い込ませたりして、ゴージャスお抱えの消費者金融で借金をさせ、女の子をソープに沈める。沈めた後、利息はもちろん、元金を返せないよう男を横につけて稼いだお金をむしり取るって仕組みだよ」

 

○営業中のSWANの店内

片瀬刑事「うーん。」

片瀬刑事、腕組みをして考え込む。

みずほ「どう頑張ってみても、片瀬さんの勝ち目はないね」

片瀬刑事「あースワンさんには一度も勝てないな。もう一度、勝負してもらってもいいかな」

片瀬刑事、アバロンボードゲーム

の玉を元の位置に戻し始める。

白鳥「いいですよ。その前に、片瀬さん。ちょっと、お渡ししたいものがありまして」

白鳥、アバロンのボードの上にアバロ

ンのボールに似た黒色のボール型の盗

聴器を置く。

片瀬刑事「え~、いらないよ。スワンさんが私にくれるものって、たいがいやっかいなものばかりなんだし」

片瀬刑事、目の前に置かれた黒色のボ

ールを白鳥の前に置き直す。

白鳥「俺は片瀬さんを尊敬してるんです。世の中の幸せや平和のため、がむしゃらに突き進む姿、俺は片瀬さんの姿勢に共感して、少しでもお役に立てればと思ってるんです」

白鳥、目の前に置かれた黒色のボール

を片瀬刑事の前に置き直す。

片瀬刑事「いやー、スワンさんの気持ちは嬉しいんだけど、僕はそんなに立派な人間じゃないよ。」

白鳥「いや、家族を失って、路頭に迷ってた俺を助けてくれたのは、片瀬さんだけだったんですよ。あれから12年、ずっと片瀬さんは俺を見守ってくれている。俺、片瀬さんをおやじのように思ってるんです。」

片瀬刑事、苦しそうな表情を僅かに見せる。

片瀬刑事「そんな事を言っちゃ、本当のお父さんが悲しむよ」

白鳥「俺が一人ぼっちなってしまったのは、おふくろや妹が行方不明になったのは、俺のおやじのせいなんですよ。家族の事を考えたなら、危険な事に手を出してはいけなかったんだ。いや、危険を顧みず何かをするなら、家庭を持っちゃ、いけなかったんだ。あの頃はなぜあんな事になったのか、よく分からなかったんですけどね」

片瀬刑事「どこまで調べられたんだ?」

白鳥「おやじがルポライターの仕事をしてたのは分かったんだけど、何を調べてたのかは全然分からないんです。家族もどこにいるのか」

片瀬刑事「そうか。僕に出来る事があればいいんだが。なかなか難しくてね。僕も刑事とはいえ、結局はサラリーマンだからね。」

白鳥「俺、助けを求めてる人達や、悪い人間に利用される人達を助けたいんです。俺みたいな目に誰も合わせたくないんだ」

片瀬刑事「わかったよ。ゲームだけじゃなく、正義への熱意はスワンさんには勝てないよ。やっぱり、今日はこれで帰る事にするよ」 

片瀬刑事、黒色のボール型盗聴器を背

広の内ポケットにしまって、席を立ち、

店を出ていく。

 

○閉店したSWANBARの外

 看板の電気が消え、白鳥が店内から

外に出て、扉のスワンの形をしたプレ

ートをひっくり返して、また、店内に

戻る。

白鳥「みずほ、もう帰っていいよ」

みずほ「スワンさんは?」

白鳥「少し残ってしたいことがあるんだ」

みずほ「わかった」

みずほ、少し寂しそうな顔をした後、

微笑む。

みずほ「お疲れ様でした。おやすみなさい」

白鳥「ああ。また、明日、よろしく。おやす

  み」

みずほ、扉の外で扉にもたれながら、

つぶやく。

みずほ「飲み過ぎないように」

白鳥、照明の落ちた店内で、棚に置い

てあった汚れた人形を手にし、カウン

ターに座ってジンのストレートを飲む。

 

(回想)

白鳥の両親、白鳥の妹、白鳥(10歳)

が、電気の消えた文化住宅の部屋から、

外に出る。扉の外側には人殺しや犯罪

者などと書かれた沢山の紙が貼られて

いる。白鳥は下唇を噛んで、1枚剥が

す。父親が白鳥の頭を撫でた後、4人

は駐車場の車に乗る。父親が車にエン

ジンを掛ける。

妹「あ、忘れた」

母親「何を?」

妹「ママが作ってくれた私とお兄ちゃんの人

  形」

母親「また作ってあげるから」

妹「いや! 取りに帰る」

妹、車から降りて、家に向かって走り

出す。母親も降りて妹を追いかける。

車内で白鳥と父親は2人が戻ってくる

のを待つが、なかなか帰ってこない。

妹と母親が車に向かって歩いてくるの

が見えて、ほっとしたのもつかの間、

チンピラ風の男3人が妹と母親の前に

立ちはだかる。運転席の扉を開けて、

父親が出ようとする。

チンピラ2人が車に向かって走って来

る。

母親「逃げて。優を連れて逃げて。早く」

父親、優を見た後、もう一度、母親の

方を見てから運転席に戻り、車を発進

させる。

白鳥「お母さん! 風子!」

白鳥、後ろを向き、涙を流しながら、

叫ぶ。風子の手に握られた人形をチン

ピラが取り上げて、捨てるのを見て、

白鳥、下唇を噛む。

(回想終わり)

 

○古民家を改装したカフェ

オーナー星野「あー、スワンさん、いらっしゃい。」

白鳥「星野さん、どうですか? 彼女は?」

星野「大助かりよ。彼女が作る料理もケーキも本当に美味しくて、おまけに愛想もいいし、ここを手放さなくて済みそうよ。私が生まれ育った家。どうしても手放したくなかったから、本当に嬉しいわ。」

洋子「あ、大門さん!」

大門「どうですか?」

洋子「オーナーもとても親切だし。2階の部屋に住まわせてくれて、3食付でお給料を30万円ももらえるし。それに、私が作った料理やケーキを皆さん、美味しいって言ってくれるし、本当、夢みたい」

子供「ただいま!」

洋子「あ、孝介お帰り!」

子供「あ、こんにちは!」

白鳥、大門、孝介に手を振る。

 

○開店前のSWANBarの店内

みずほ「大門ちゃん、今日、あの親子の所に行くって言ってたわ。孝介君の部屋の模様替えを手伝うんだって。」

白鳥「あいつ、今日、用事があってこっちに来れないって言ってたのはそのせいか。何の用事か聞いても答えなかったのに、みずほには本当のことをちゃんと話すんだな。」

みずほ「スワンさんは、すぐ、ひやかすからじゃない?」

みずほ、笑う。

白鳥「最近言ってないぞ。もう、あいつをからかうのも飽きちゃったからな。」

店の固定電話が鳴る。

みずほ「はい、スワン探偵事務所です。え、あ、星野さん? どうしたんですか。え、なんですって!」

みずほ、受話器を口から外す。

みずほ「大門さんと女性と男の子が連れて行かれたって。」

白鳥、事務所を飛び出して、バイクに

またがる。

 

○ゴージャスの事務所のビルの前

白鳥、バイクを降り、ヘルメットを脱

ぎ捨てるとビルの中へ走って行く。階

段を駆け上がって、ゴージャスの入口

に立つ男に殴りかかろうとした時、ゴ

ージャスの事務所の中から、大門と洋

子と孝介が出てくる。

大門「失礼しました」

大門、事務所に向かって頭をぺこりと

下げる。

入口に立つ男、大門の前に立ちはだか

る。

事務所の奥にいる男「行かせろ」

入口に立つ男、大門の前から離れる。

大門「行きましょう」

大門、白鳥の顔を見て、微笑みながら

エレベーターに向かって歩いて行く。

白鳥、茫然としながら、しばらく立ち

止まった後、大門の後ろへついて歩き、

エレベーターが到着するのを待つ。

白鳥「どうやって、解決したんだ」

大門「僕の得意なペコペコ攻撃で」

白鳥「ペコペコ攻撃?」

大門「ひたすら、ごめんないさい、許して下

さいって謝り続けるってこと」

大門、ぺこぺこ頭を下げながら、説明

する。

白鳥「あーペコペコ攻撃ねって、そんな事で

解決するわけないだろ」

白鳥、大門の目をじっと見る。

大門、少し微笑む。

大門「僕の童貞を捧げたら、許してくれた」

白鳥「もっと無いわ」

大門、白鳥をじっと見る。

大門「本当になんで許してくれたのか、分か

らないんだ。どうしてなんだろうね。な

んにせよ、無事だったんだから、よかっ

たよね。それじゃ、僕は、洋子さんと孝

介君を家まで送ってくるね」

大門、孝介と手を繋ぎ、洋子さんと笑

って話をしながら、去っていく。

白鳥、険しい(考え事をしているよう

な)顔でその後ろ姿を見送る。

 

○開店前のSWANBarの店内

大門「僕、アシスタントの試験、合格かな?」

大門、ウキウキした様子で店内のテー

ブルを拭き始める。

みずほ「どうだろうね。この間、スワンさんが大門君のこと、気が弱いし、ドジだから、どうしようかなって言ってたけど」

大門「みずほさん、もちろん、僕の事フォローしてくれましたよね」

大門、掃除をする手を止めてみずほを

見る。

みずほ「なんで、そんなことしなくちゃいけないの?」

大門「えーひどい。ジェンダーレス仲間じゃないですか」

みずほ「大門ちゃん、ジェンダーレス男子にしては、ダサ過ぎるんですけど」

みずほ、大門を見ながら笑う。

大門「そんなにダサいかな」

大門、再び掃除を始めてみずほの後ろ

の棚を拭き始めた時、棚に古びた男の

子と女の子の人形が置いてあるのをみ

つける。

大門「ねえ、この人形ってお店のインテリ

  ア?」

みずほ「ああ、それは、スワンさんの物なんだけど。」

みずほ、後ろを振り返って、人形を見

ながら言う。

大門「なんだかこの店の雰囲気には合わない気がするけど」

みずほ「私も一度、スワンさんの物って知らずに、これ汚いから捨てませんかって言ってしまったんだ。宝物なんだって言って、スワンさん、少し悲しそうな顔をしたの。それから、その人形のことにはふれないようにしてる。」

大門、女の子の人形を手に取る。

大門「なんだかどこかで見たことがあるような気がするんだけどな。気のせいかな」

大門、独り言のようにつぶやく。

○バーの人形を手に持った子供の風子と家族の写真のUP

○風子の部屋

風子、写真立てを手に持ち、写真をじ

っと見る。

風子「行ってきます」

風子、玄関から外へ出ていく。

(第一話 完)